クリプト道場

クリプト・ブロックチェーンに関わる疑問を解説します

フラッシュローンについて学ぶ

DeFi周りをリサーチしているとよく「フラッシュローン」という単語に遭遇する。これは、Ethereum上のLendingの一つであるAaveの独自サービスであり、現在では、様々なDeFiでフラッシュローンが実装されている。フラッシュローンは、ブロックチェーンの特性を活かした取引であり、現実の取引所や金融資産では行えなかったので『There is no real world analogy to Flash Loans』という説明がしばしされる。そんなフラッシュローンの概要をまとめる。

フラッシュローンってなに?

フラッシュローンとは、スマートコントラクトによって実行される新しいタイプの無担保ローンである。従来のDeFiレンディングでは、借り入れに担保が必要である(当たり前)。そして、借りる側は担保価値のおよそ75%分しか借り入れることができない。しかし、フラッシュローンでは、同じトランザクションでローンを返済できる限り、無担保で上限なく借り入れを行うことができる。一度のトランザクションで借入と返済を処理するため、高額な借入を行ったとしても金利はほとんど発生せず、ガスのみがコストとしてかかるのが特徴である。Aave、dydx、bZxをはじめとするDeFiプロトコルがレンディングプール内の未活用(借りられていない)資産を活用する方法として提供している。 (利息は発生しないが、手数料が発生する場合がある。Aaveは借入額の0.09%が手数料、dydxとbZxは無料。)

フラッシュローンはシングルトランザクション内でアビトラの処理や返済(aaveは手数料も支払う必要あり)ができなければ処理はリバートされる。起点の借り入れと、出口での返済が整合したら、トランザクションは成功するが、担保割れ設定などによって途中で失敗が起こると、トランザクション全体が失敗に終わる。いわゆるアトミックトランザクションであり、全て成功するか、全部何も起こらないかのどちらか、ということになる。

フラッシュローンのユースケース

フラッシュローンの主な利用用途としては、DEX (分散型取引所) 間の価格差から収益を得るアービトラージが挙げられる。よって、フラッシュローンは暗号資産取引所間での価格安定性を高め、究極的には暗号資産エコノミーを強化する一方で、悪意のある方法で使用されることもある。

フラッシュローンを利用した攻撃の事例として一番有名なのは、2020年2月に発生したdydxフラッシュローン事件である。あまり攻撃の詳細には踏み込まないが、bZx、dydx、Fulcrum、Compound、Uniswapのプロトコルを使用したフラッシュローン事件であり、基本的にはアービトラージ取引とbZxのコントラクトバグを突いた複合的なハックとなっている。担保をデポジットする必要がないため大きな金額をレバレッジすることが可能になる、というフラッシュローンの仕組みと、スマコンのバグを組み合わせた巧妙な攻撃である。

bZxハックの流れ

まとめ

フラッシュローンは、開発者のみしか利用することができないため、スポットライトが当たりにくいが、通常通りに使用されれば、アービトラージなどによりDEXの価格を安定させると同時に、開発者もガス代のみで利益を生み出すことができる便利な機能である。しかし、無担保で流動性がある限りの金額を誰でも動かせることから潜在的なスマコンのバグを悪用されてしまう可能性も十分あるため、注意したい。どうやらAaveのフラッシュローンはテストが簡単であるっぽいので、テストネットでまた後日試してみようと思う。

 

参照

https://alis.to/CryptoChick/articles/azDdNV9mzvrp

https://yuyasugano.medium.com/%E7%A7%92%E9%80%9F%E3%81%A71%E5%84%84%E5%80%9F%E3%82%8A%E3%81%A6%E8%BF%94%E3%81%99-aave-flash-loan-in-ropsten-ebef622760cd