オンチェーンデータ分析周りのプレイヤー調査(8/17)
Datawisp(B2B)
Web3やゲーミングに焦点を当てた、B2Bのノーコードデータツール。実際今はオンチェーンデータという素晴らしいツールがあるにも関わらず、The Graphなどでコードを書かないと、インサイトのあるデータを抽出できない現状である。Dataswapは、複雑なクエリをダッシュボードと一緒に完全GUIで利用できるようにすることで、この課題の解決を図る。他のNFTなどに着目したデータツールと異なり、toBに焦点を絞り、Web2とWeb3の分析ツールの統合なども行なっている。
Laevitas(DeFi専用)
暗号資産の予測やオプションマーケットに関する詳細なデータを提供するツール。既に2000以上のユーザーやヘッジファンドに利用されているそう。将来的にはDeFi以外にもNFT領域などにも参入する予定そう。
https://medium.com/laevitas/announcing-our-2-5m-seed-round-a58d349282f2
https://app.laevitas.ch/dashboard/btc/delta_exchange/options/activity/overview
Hyperspace(Solana NFT専用)
Solana上のNFTのトレーディングデータやフロアプライスを見れるポータルサイト。一見普通のNFTデータサイトに見えるが、将来的にはNFTのアグリゲーターとして進出することも考えているそう。だが、SolanaはMagic Eden一強状態なので、現時点ではアグリゲーターの需要は低いといえる。
https://hyperspace.xyz/leaderboard
TabTrader(モバイル)
暗号資産の取引データや価格などを見れるデータプラットフォーム。他のサービスがデスクトップ志向であることに対して、モバイル最適化することで差別化を図る。また、多くの投資家がさまざまなCEXで口座を開いており、それぞれでプッシュ通知を設定するものの届かないことも少なくなく、TabTraderでは、クロスプラットフォームでプッシュ通知の受け取りを可能とする。また、このアプリを通して取引を行った際には、手数料を取るモデルである。
Staking Rewards(ステーキング)
Stakingに関するマーケットデータを一覧で見ることができるサービス。2018から開始しているようで、確かにサイトもかなり洗練されていた。ステーキングに関するマーケット情報から、ポートフォリオや分析ツールなど機能も多岐にわたる。ポートフォリオ管理という観点では一部DeBankと被っている
Crypto Fundraising(8/16)
Pinata(NFT)
PinataはGreylock PartnersとPanteraをリードとした$18MのシリーズAラウンドを完了した。PinataはクリエイターにNFTを様々なマーケットプレイス、アプリ、メタバースやブロックチェーンで流通させることを支援する。このプラットフォームでは画像だけでなく、アップロード可能なメディアはすべて対応しており、記事の中でも、NFTではJPEG画像以上にリッチなコンテンツを元にした面白いユースケースが出てくるだろう、と述べられていた。
https://www.pinata.cloud/blog/ceo-deep-dive-why-nfts-are-not-all-the-same
Ultimate(ウォレット)
Unstoppable Financeはnon-custodial walletであるUltimateを開発するため、Lightspeed Venture Partnersがリードした$12.8MのシリーズAラウンドを完了した。従来のウォレットとの違いは、DEXといったDeFiアプリケーションをウォレットのUIの統合することで、わざわざウェブサイトにアクセスする必要がなくなることである。Metamaskに挑戦するウォレットは多いが、未だに成功者はいない。果たしてどうなるのだろうか。
https://www.theblock.co/post/160936/defi-wallet-startup-unstoppable-finance-raises-e12-5-million
Lysto(ゲーミング)
ゲーマー向けの認証ツールを開発するLystoは、プリシリーズAラウンドでTiger Globalなどの参加も経て$12Mを調達した。Lystoのソリューションにより、ゲーマーはオンチェーンでの実績・信用をデジタル化し、持ち運ぶことができるようになり、トーナメント参加やチームを組成するときの実力の証明になる。LinkedInで経歴を持ち歩くことと似ている。
https://www.theblock.co/post/162477/lysto-raises-crypto-funding-tiger-global-gamer-infrastructure
Injective(L1ブロックチェーン)
InjectiveはJump CryptoとBH Digitalをリードとした$40Mのラウンドを完了した。Cosmos SDKを元に作られたブロックチェーンであり、DeFiを既存金融につなぐことを目的としたDeFi特化チェーンである。
https://blog.injective.com/injective-raises-40-000-000-to-advance-web3-finance/
Crypto Fundraising(8/15)
Cashmere(ウォレット)
Solana用のエンタープライズウォレットマネジメントツールを提供するCashmoreは、$3Mのシードラウンドを完了した。Coinbase VenturesやYCombinatorの参加があった。Solanaでは直近のウォレット関連のハッキングもあり、リスクが懸念される中、CoashmereではMulti-sig機能なども提供している。ローンチ後には、OpenSeaなどからもサインアップがあったそうだ。Cashmereでは、マスアダプションに向けて暗号化やコールドウォレットに詳しくない人でも安全なソリューションを使えるようにしたいそうだ。
MetaverseGo(メタバース)
モバイルゲーミングプラットフォームのMetaverseGoはGalaxy Interactiveをリードとする、$4.2Mのシードラウンドを完了した。今年のQ2のブロックチェーンアクティビティのうち52%はゲーム関連であると言われるものの、世界の全ゲーム人口に比較するとごく一部しかブロックチェーンゲームをプレイしていないのは、オンボーディングに問題があると、MetaverseGoは考えている。例えば、ウォレット・暗号通貨の取得、アイテムを買うこと、などである。MetaverseGoでは、電話番号を登録すると自動的にウォレットが作成され、ゲームアイテムもアドレスに付与され、プレイ開始ができる。収入の一部は、アイテムを提供しているYGGなどに分配されるが、ゲームでの稼ぎは自分のウォレットに移動や、振込も可能である。CEX的なシステムであると考えられる(ウォレット立ち上げてあげるし、CEX側が管理する、的な)https://www.theblock.co/post/162166/metaversego-raises-4-2-million-in-seed-funding-round
RISC Zero(L1ブロックチェーン)
ゼロ知識証明関連プロダクトを開発するRISC Zeroはシードラウンドで$12Mの資金調達を完了した。今年の3月には、ゼロ知識証明のVMをローンチした。このVMでは、ゼロ知識証明を開発者にどんなモダンなパソコンで、さまざまな汎用言語で開発をできるようにする。今回の資金調達を機に、このVMとゼロ知識証明を用いた、スケーラブルなL1ブロックチェーンの開発を始める。開発者はRust, Go, C++といった言語を使って開発が可能となる。
CreatorDAO(DAO)
CreatorDAOがa16zなどの参加による$20Mのシードラウンドを完了した。CreatorDAOでは、申し込みを行なったクリエイターに対して、メンタリングやテックサポートをする代わりに、収入の一部を受け取る構造となっている。FounderのMicheal Ma氏は、以前もファウンダーとしてローンチしたサービスをGoogleに売却した経験を持つ。
Crypto Fundraising(8/14)
LifeForm(DID)
ビジュアル化されたDIDソリューションを提供するLifeformはBinance Labsをリードとするシードラウンドの調達を完了した(調達額は未定)。Lifeformでは3DのアバターをDIDと紐付け、Web3上のアイデンティティとして使えるようにする。
Volare Finance(オプション)
DeFiに対するオプションを提供するVolare Financeが$6Mをシードラウンドで調達をした。投資家に対してさまざまなオプション取引を提供している。
Stride(Liquid Staking)
Cosmos上のliquid stakingプロトコルのStrideがNorth Island VC、Distributed Global、Pantera Capitalをリードとした$6.7Mの資金調達を完了。典型的なLiquid Stakingと仕組みは変わらず、stTokenをエコシステム内で流通させることを目指す。まずはATOMに対して、Liquid Stakingを提供するが、将来的にはCosmos上のすべてのチェーンのliquid stakingを提供する模様。これは、似たマルチチェーンのPolkadotなどでは、一つのチェーンごとにliquid stakingが出てくるので、規模的にも非常に大きいと言える。
Coherent(データ)
オンチェーンデータAPIを提供するCoherentがシードラウンドで、Kindred Ventures、Foundry Group、Matchstick Venturesをリードとし、$4.5Mを調達。プレスによると、昨今のAPIは、ダウンタイムが長い、インフラコストが高い、データ形式が複雑、など難点が非常に多い。これを受けて、Coherentでは、制限がなく、シンプルで、マルチチェーンにも対応できるユーザーフレンドリーなAPIを開発をしている。
https://mirror.xyz/coherentapi.eth/xeRW6Cw4xDp9rKDzJhC41n0HO2CD42EkNfo3IPTgK7c
Fair.xyz(NFT)
NFTのミンティングサービスであるFair.xyzはEden Blockをリードとし、Openseaなども参加した$4.5Mのラウンドを完了した。創業者によると、現在のNFTのミントのプロセスは、開発者の知識の欠如、ガス代、トランザクションの失敗などにより、崩壊しているという。ノーコードでミントできるサービスはあるが、10,000ものNFTをミントする際は自分でスマートコントラクトを書く必要がある。Fairはこれに対して、瞬時にNFTをミントできるサービスを提供し、ガス代を削減しつつ、トランザクションの失敗も減らす。サービス側は6%の手数料を受け取る。
https://www.theblock.co/post/162065/opensea-backs-nft-minting-platform-fair-xyz-in-4-5-million-round
Crypto Fundraising(8/13)
Galoy(ウォレット)
エルサルバドルをベースとするビットコイン関連事業を展開するGaloyはHiveming Venturesをリードとする$4Mの資金調達を完了した。元々Galoyは、GaloyMoneyというライトニング決済をAPIを通して企業に提供するオープンソースのビットコインバンキングプラットフォームを提供している。今回のラウンドにあたり、ビットコインを担保にしたUSドルの合成資産の開発を発表した。発展途上国では、ビットコインのボラタリティのリスクをヘッジしたUSドルには非常に需要が高いそうだ。
https://bitcoinmagazine.com/technical/galoy-brings-us-dollars-to-bitcoin
Bits Crypto(モバイル)
モバイル暗号資産投資アプリを提供するBits Cryptoはプレシードラウンドで、MoonPay、StripeやKrakenに投資を行ったHOF Capitalをリードとし、$1.2Mを調達した。
Bitsでは、クレジットカードのすべての決済を次のドルに繰り上げることで、繰上げ分の少額を暗号資産に投資ができる。これにより、ユーザーは、小さい額を投資しづけ、ドルコスト平均法により独自のポートフォリオを形成できる。暗号資産はあまりにも価格変動が大きく、一度に大きな額を投資するより、徐々に分割で投資することの方が高いリターンを見込めると考えられる。
RobinhoodやCashappといった競合との差別化は、競合では自前のクレジットカードのみでしたこの機能を使えないことであり、BitsではPlaidを通してどのデビット・クレジットカード、銀行口座でもこの機能を使い始めることができる。
Coionbaseとも既に提携を発表しており、グローバルにリーチすることを目指す。
MarqVision(NFT)
NFTの偽物詐欺感知サービスを提供するMarqVisionはDST GlobalをリードとするシリーズAのラウンドで$20Mを調達した。MarqVisionは、AIによる知的資産保護プラットフォームを運営しており、Eコマース市場やデジタルコンテンツの偽物を自動的に感知し、オンラインでの販売、流通から取り下げる。LA拠点のスタートアップであり、Y Combinatorに採択をされた過去がある。MIT出身者などを擁し、AI開発を行っている。この偽物詐欺は衣類市場でも横行しており、2020時点では年間$27Bもの年間売り上げが偽物詐欺により失われている。
Crypto Fundraising(8/12)
Ambrus Studio(ゲーミング)
Web3ゲーミングスタジオのAmbrus Studioが$65MのバリュエーションでSpartan GroupとM13がリードしたラウンドで調達。Ambrus Studioは元Riot Games Asia PacificのCEOであったJohnson Yeh氏が2021年12月に創業をしたゲーミングスタジオ。Ambrus Studioのゴールはサステイナブルなメタバースエコシステムを持った無料で遊べるEスポーツベースのゲームを作ることである。
Ambrus Studioの一本目のゲームである、「E4C: Final Salvation」は、Web3における初めてモバイルMOBAゲームにEスポーツ要素を組み込んだ事例となる。
Riot GamesはValorantやLOLを作成する大手のゲーム会社であり、そこの元アジア部門のCEOが創業したことからも高いバリューエーションが付いたと考えられる。
https://twitter.com/AmbrusStudio
Debt DAO(DAO)
DAOやプロトコルといった”cyprtonative entities"に融資を行うDebt DAOがDragonfly Capitalがリードのラウンドで$3.5Mを調達。他にも元CoinbaseのCTOなどもラウンドに参加している。
現時点のDeFiエコシステムには融資を受けることができないという課題があり、収益を生み出しているDAOなどでもネイティブトークンを売り、資金を調達する必要がある。プロトコル側とては、ネイティブトークンを不必要に排出することは避けたいため、融資には大きな需要があるといえる。Debt DAOによる融資の仕組みは、「Spigot」と呼ばれるスマートコントラクトにより、債務者のオンチェーンキャッシュフローを自動的に債権者に返済できる仕組みを元に成り立っている。ホームページには"Enables collateralization of future revenues."と書かれているので、将来の収益を担保にできる、ということだそう。
https://mobile.twitter.com/debtdao
https://www.theblock.co/post/160427/dragonfly-capital-leads-3-5-million-seed-round-for-debt-dao
reNFT(NFT)
NFTのrentingプロトコルreNFTがMechanismとgumi Cryptos Capitalのリードによる$5Mの調達を完了。他にもOpenseaやSandboxなどもラウンドに参加。CEOは元Sandboxのマーケチーム出身。
今までマニュアル作業であったScholarshipの中でのNFTのrentingなどもreNFTをintegrationすることで自動化ができる。SDKを提供し、RentingのためのWebサイトも提供することで、プロジェクト側の開発コストを下げることに注力されている。Rentingには、様々なスキームがあるようで、所謂従来の担保型の方法など沢山存在する。(詳しくは、Deep Dive into the reNFT Platform)
https://nftplazas.com/renft-raises-5m-in-investment-round-to-bolster-web3-gamefi/
暗号資産のインフレとデフレについて
ビットコインやイーサリアムといった暗号資産について調べていると、「年間XX%インフレーション」のような表記を見るが、これは何のことなのだろうか?
まず、トークンの量を測る指標を3つ紹介する。
①最大供給量:流通させるコインやトークンの最大数(ビットコインは2100万)
②総供給量:①のうち既に生成されたトークンから、burnされた、流通から引き出されたトークンを差し引いた量
③循環供給量:②のうち、Stakingされたトークンや、チームのアロケーションを引いた量
インフレ
多くの場合、トークンは時間と共に徐々に発行され、ある一定の時点で最大供給量に達する。ビットコインの例では、マイナーに報酬を与えるために、ブロックごとに新しいコインが生成される。そのため、総供給量は執筆時点で、年率1.7%の割合でインフレをする。これは、最大供給量の2100万BTCに対して1.67%の量のビットコインが新たに発行されるということである。
このように供給量が毎年増えているのに、ビットコインの価格が上昇トレンドにあることは、インフレ率をはるかに上回る需要があるからである。ここで、インフレ率を高くしすぎ、DeFiのStaking報酬などに配りすぎると、需要が追いつかずに、供給が増えすぎて、価格の低下を招いてしまう。
デフレ
インフレが徐々にトークンの枚数を増やすことを指すのに対し、デフレはトークンの枚数を減らすメカニズムであり、供給量を減らすことで、長期的な価格の上昇に有利に働く。具体的にはburnやbuy backが挙げられる。このようなアクションを取ることで、需要が供給を上回るように制御することがある。
このデフレの特徴的な事例としてBNB(Binanceプラットフォームで使う暗号通貨)がある。Binanceでは、取引所とBNB Chainでユーザーが支払った手数料を一部焼却するメカニズムが存在し、既に3600万枚以上のBNBがburnされている。
需要を生み出すユーティリティ
このように、暗号資産が長期的に成功(=価格の上昇)するために必要なことは、短期的な投機需要ではなく、そのユーティリティ(実用性)である。暗号資産におけるユーティリティは多く考えられる
前述のBNBは、既に100%発行されているにも関わらず価格が上昇し続けており、ユーティリティを生み出し需要を増やす一方で、burnをうまく組み合わせることで供給を絞っている。BNBを保有することのメリットは、以下が挙げられる。
まとめ
今回は、暗号資産における基本である需要・供給、そしてインフレ・デフレについて概観した。どんなに優れたプロジェクトでもトークノミクスがお粗末では、長期的にトークンの価格を上昇させることが難しい。